第3話:「人は損をするのが大嫌い!?」~損失回避傾向~
第3話では、行動経済学から「人は損をするのが大嫌い!?」というお話をしますね。
損失回避の傾向
こんな状況を想像してみて下さい。
あなたは、〇△商事株式会社 に勤めています。
あなたの給料は来期から2万円のアップです!
【ケース2】業績がひどく不振です。経営が大変で、従業員一律給与の引き下げに応じました。
あなたの給与は来期から2万円のダウンです!
さて、2万円上がった嬉しさと、2万円下がった苦しみは同じ大きさでしょうか?
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多くの人は、2万円上がった時よりも、2万円下がった時の方がはるかに精神的なダメージが大きくなります。
どちらも同じ2万円なので理論的に考えると、気持ちの揺れる大きさは、同じはずなのですが…。
実際には、損を感じる痛みの方が2倍以上~感情が大きく動きます。
なぜこのように違うのでしょう?
それは、人には「得られる利益よりも失う損失の方に、より強く反応してしまう」という性質が備わっているからなのです。
「損したくない心」は私達の行動に強い影響を与えています。
例えば
◆〇日以内にお申込み頂いた方に限り、○○円お値引きいたします!
◆先着〇名様限定で、○○を特別にサービスさせて頂きます!
とアピールされると
買おうか迷っていたものでも、「今買わないと損してしまう!」と気持ちが揺れる経験は、皆さんもおありですよね?
「損をしたくない」という思いによって行動した結果、かえってもっと大きな損を呼び込んでしまう。
この現象は、私達の消費行動においてよくあることです。
買い物といっても、洋服やテレビを買うのであれば、実物を目で確認できますし失敗しても自分で気づくことができます。
しかし金融商品の場合はどうでしょうか?
実物を見て商品を判断するという普通の買い物の常識がまったく通用しません。
「かたちとしてのモノ」がないので
販売側からの説明とパンフレットの文字だけが頼りです。
買った後でも「かたちとしてのモノ」がないので、自分の価値観に合っていない商品であっても、20年、30年経ってもそのことに気づいておられない方がいらっしゃるくらいです。
分かりやすい例で、保険でお話しすると
月1万円の保険料も・・・
10年間かければ、1万円×12か月×10年=120万円
20年間かければ、1万円×12か月×20年=240万円 ですよね。
安心を買うのですから自分にとって価値のある安心が買えていればそれはすばらしい買い物なのです。
しかし、「加入している保険についてよくわからない」とおっしゃる方々にその保険に加入された目的をお尋ねすると
◆「貯蓄のために」と言われているのに、引かれている手数料のことが抜けている。
◆「万一の時に困らないように」と言われているのに、必要な時に、必要な保障が得られない内容。
◆「家計が大変」と言われているのに、大きすぎる保障に、大きな掛金を費やしている。
など、目的と商品選びが合っていないことが本当に多いのです。
保険に限らず金融商品全般において言えることですが、
私は、売り手側が販売をしやすいように、商品内容が複雑でよくわからないようになっていたり、
簡単に比較できないようになっていることにも問題があると思っています。
普段の買い物で、「今日はダイコンが100円も高い!」と買うのを躊躇される方が
自分が望んでいた内容とは違う商品に240万円も費やしてしまう現実が起きていることどう感じますか?
保険・証券・住宅ローン・金融商品全般「かたちとしてのモノ」がない商品においてこういった消費者行動は普遍的に繰り返されています。
もちろん、パンフレットには正しい情報が書いてありますし販売側は、嘘は言いません。
しかし、書かれてある内容の、小さい文字まで正確に理解できることと
販売側から、どのような言い回しで、情報を伝えられどのように受け取るかは別問題なのです。
私達は「フレーミング効果」で情報の解釈をよく間違えますし、「損だけはしたくない」と本質的には思っているので
この商品を買わないと経済的な損失が大きいのだと考えると、
「かたちとしてのモノ」がない商品の場合はなんとなく分かったつもりになって契約してしまいがちです。
そもそもの金融知識がないと何をどう判断していいか分からないので、感覚に頼るしかなくなってしまうからです。