「がん保険不要論」について思うこと
みなさんは
がん保険には加入されていますか?
私は、加入しています。
保険料と保障内容のバランスに満足していて、どんな時に下りて、どんな時に下りないかを
納得して加入している
自分が入りたくて入っている保険 だからです。
以前から「がん保険不要論」というものがありましたが
最近は、特に盛んなように思います。
みなさんも、そういった文章を読まれたことがあるのではないでしょうか。
私もずいぶん読みましたよ。
・高額療養費の制度があるので、治療費なんて、たいしてかからない。
・貯蓄が150万あれば、がん保険なんて不要。
(150万の箇所が、100万になってたり、200万になってたり、300万になってたりと色々…)
・支払った保険料の、元なんて絶対に取れない。
・貯金で用意した方が得。
・儲かるのは保険会社だけ。
・そのお金があるなら他へまわすべき。
・不安をあおっているけれど、実際にがんになる確率なんて若いうちはごくわずか。
・保険会社の人なんて、顧客にはがん保険を勧めているけれど、自分たちは加入していない。
こういう内容の記事を、私はずいぶん読みました。
初めて読んだのは10年程前、有名なFPの方が書かれた新聞のコラムだったのですが、
読んだ私は、胸が張り裂けそうになっていました。
当時、1営業あたり12億円のがん保険給付金・保険金を支払っている保険会社の代理店をしていた私は
がんになられて、生死と向き合い、入退院や通院を繰り返されている方々の
がん保険請求手続きを常に抱えておりましたので
その方々やご家族が、私に会う度に
「がん保険に入っていて本当によかった。」「おかげで頑張ろうと前向きな気持ちになれる。」
「お金の勘定をせず治療に向き合えるのは精神的に大きい。」「子供の大学費用も払っていけた。」「今だけではなく、これから先のこと思うとすごく安心。」
と仰っていたお言葉の数々、その時の表情や空気が、まるで存在しないものとされてしまったかのように感じたからです。
「がん保険」という、その後の人生を大きく左右する
極めてプライベートな事柄に、他人が下す、絶対という正解はない
と、私は思っています。
「がん保険不要論」は、モデルケースやデータを引き合いに出して計算され、損得勘定に基づいて理論的に書かれています。私も、FPですから、言われている内容はわかります。
人それぞれ価値観は違いますので、考えを否定するつもりはありません。
ただ、私が感じている現実とは、違いがあるのです。
・高額療養費の制度があるので、医療費なんて、たいしてかからない。
・貯蓄が150万あれば、がん保険なんて不要
(150万の箇所が、100万になってたり、200万になってたり、300万になってたりと色々…)
⇒ 断言はできない。
どの部位のがんになるのかも、いつがんになるのかも、どれくらい治療が続くのかも誰にもわからない。治療費だけを考えれば良いというものではない。当事者にしか分からない家計への影響がある。収入減と支出増のダブルパンチは経験した者にしかわからない。
高額医療費の制度は、現状の水準のまま続くことは難しい。
国の社会保障給付は、少子高齢化によって、危機的状況にさらされている。
がん治療は進歩が目覚ましく、高額化している。
・支払った保険料の、元なんて絶対に取れない。
⇒ 断言はできない。
大事に至らなかったがん(例えば、内視鏡検査でポリープを取ったらがんだったが、取りきれたので追加治療なしのケース)と、一筋縄ではいかないがん(治療の複雑なもの、長期化、後遺症、合併症、再発、転移などのケース)とでは、同じがんという病名でありながら、置かれた状況は全く異なる。
後者の場合、支払った保険料よりも多くの給付金を受け取って頂くケースの方が、実務では圧倒的に多かった。
・貯金で用意した方が得。
・儲かるのは保険会社だけ。
⇒ がん保険は、損得や、儲けるために加入するものではない。
保険会社は、多くの人が出し合った保険料を取りまとめ、がんに罹ったへ届ける
「相互扶助の原則」に基づいて事業を運営している。
自分ががんにならなければ、その保険料は、がんに罹った方へ支払われ、自分ががんになった時には、他の人が支払った保険料が自分のところへ回ってくる。
事業を継続するために必要となる経費は、加入者が支払う保険料に含まれている。
・そのお金があるなら他にまわすべき。
⇒ がん保険に対する価値は、本人が決めるもので、他人が断定的に決める事ではない。
・不安をあおっているけれど、実際がんになる確率なんてわずか。
⇒ 当事者にしてみれば、がんになる確率が、統計的に何%だとか論じることに意味がない。
自分や家族が、がんになったら…。 それは、100%の現実である。
・保険会社の人なんて、顧客には、がん保険勧めているけれど、自分たちは加入していない。
⇒ 私が代理店をしていた保険会社の社員で、がん保険に自分が加入していないという人には出会ったことがない。
(持病があって加入できなかった場合は除く)
私は、保険の仕事をしていたとき
お客様が、万一がんに罹られた場合には、自分が全責任をもって手続きをすることになっていたため、
「無責任なことだけは言えない」
といつも思っていました。
ですから
自分以外の誰かの人生において
「がん保険なんて入る必要ない!」「300万円の貯金があるなら、大丈夫!」
と、力強く言い切ってしまえている人の文章を読んだ時には
もしも、大変なことが起きた時には、この人が、経済的援助をしてあげるのだろうか?と
素朴な疑問ながら、不思議に思っていました。
がんに罹った本人にしか、分からないつらさがあります
支える家族にしか分からないつらさもあります
がんにはいろいろな種類があり、発生する部位によってかなり異なる
更に同じ部位にできても、一人ひとりで随分と異なることもある
がんはひとつの病気ではなく、極めて多種多様の病態を示す
診断も治療も、一筋縄でいかない場合が多くある
引用:日本経済新聞2016年12月11日朝刊 医師の目 国立がん研究センター 楠本昌彦氏
(私が大切にしている言葉です)
がんになったら、そこで終わりなのではありません。
今の生活が、尊いのと同時に、その先にある生活も、また尊いのです。
がんになったって、自分の老後資金は貯めていく必要がありますし、
モデルケースとして書かれている誰かの人生は、自分の人生ではありません。
保険について考えるということは
自分自身の人生について深く考える事。
ある意味、とてもクリエイティブな作業です。
具体的に自分の価値観を研ぎ澄ませ、生活をイメージしながら、考えることを忘れないでくださいね。
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