COLUMN

03.お役立ち記事

ふるさと納税はショッピングではない

2008年にスタートした「ふるさと納税」
皆さんは、行ったことがありますか?

お得だとか、返礼品の特集だけが組まれることが多いですが
本当に大切なことは、全く、別のところにあります。

歪んだ方向へ制度が進まないよう
やっと総務省が「ふるさと納税」の見直しに腰を入れて動き始めてくれました。

私は、9月11日の記者会見で、野田聖子総務相が話された
「ふるさと納税はショッピングではない」という言葉に大賛成です!

ここでおさらい。。。
そもそも

ふるさと納税って何のために作られた制度なの?


多くの人が地方のふるさとで生まれ、その自治体から「医療や教育等の様々な住民サービス」を受けて育ち、やがて進学や就職を機に生活の場を都会に移し、そこで納税を行っています。その結果、都会の自治体は税収を得ますが、自分が生まれ育ったふるさとの自治体には税収が入りません。

そこで、「今は都会に住んでいても、自分を育んでくれた「ふるさと」に自分の意志で、いくらかでも納税できる制度があってもよいのではないか」
そんな問題提起から始まり、数多くの議論や検討を経て生まれたのがふるさと納税制度です。

(出典:総務省 ふるさと納税ポータルサイト)


例えば、北海道の北見市で生まれ育ち、東京で就職したAさんのケースを想像してみましょう。

Aさんは、北見市で、医療・教育などたくさんの住民サービスを受けて育ち、一人前になりました。そのまま地元に住んで就職すれば、納税者となって北見市に税金を納めていくことになります。
しかし、Aさんは東京都に住んで働くことになったので、東京都に税金を納めていくことになります。

あらら、これでは、育ててもらった北見市には恩返しができない。
東京都の税収は増えても、北見市の税収はこのままいけばどうなるの…?

そこで

「Aさんが望むなら、寄付金という形で、東京都へ納めるはずの税金を北見市へ納税してもいいですよ」という制度ができました。これがふるさと納税のイメージになります。
原則として、北見市への寄付金から2千円を引いた額が、Aさんが東京都へ納めることになっていた税金から控除されるので、Aさんの家計には大きな負担はありません。

ふるさとのない方でも大丈夫。誰でも行うことができます。

「ふるさと」と名の付く制度ですが
生まれ育った故郷だけではなく、お世話になった地域や、これから応援したい地域
日本全国の自治体どこへでも、何か所でも、ふるさと納税は行うことができます。

被災地支援

もできます。
平成30年北海道胆振東部地震で、私は自分の居住地が被災地となる経験をしたのですが
ふるさと納税を通じて全国から寄せられる北海道への寄付金支援の大きさには驚きました。

ふるさと納税総合サイト「ふるさとチョイス」のHPを見ると、震災から数週間で
合計寄付金額2億円以上、納税件数1万件以上が集まっていました。

応援メッセージも1万件以上で、読んでいると心があたたかくなりました。
…ありがたいですね。

 

ふるさと納税は、このように

税金の使い道を選んで地域応援

が出来る制度です。

自治体によっては、スポーツ支援や動物支援など、様々な特色ある街づくりをしています。
日本では、2016年に犬猫だけで約6万頭の殺処分が行われています。罪のない動物たちの殺処分を無くすために尽力している自治体の活動に自分が共感したら、ふるさと納税で応援することもできるのです。

 

楽しみやワクワクといえばこちら。

お礼の品をもらって地域応援

ですね。

納税者側には、地域ならではの魅力ある品や特産品などをお礼として受け取ることを通して、地域への理解を深め、「地場産業を応援していきたい!」と思う気持ちが高まっていく効果が期待されています。

寄付をしてもらう自治体側も、自分たちの魅力を見つめなおし、選んでもらえるにふさわしい取り組みをアピールすること、施策の向上が求められています。

総務省のHPには「ふるさと納税で、日本を元気に!」というトップぺージのもと
納税者と自治体が、お互いの成長を高める新しい関係を築いていくことが理念として記載されているんですね。 実際に寄付した先からお礼が届いたり、お手紙を受け取ると、まるでその土地に行ったかのような温度が伝わってきて楽しく、嬉しいものです。

 

 


このような理想を掲げて10年前にスタートしたふるさと納税なのですが
いつしか自治体間では、目先の寄付金を集めるための

豪華な返礼品競争が過熱していくようになってしまいました。


地域と関係が薄い、高級家電・ギフトカード・海外ホテルの宿泊券・化粧品・ビールなど…。
ふるさと納税総合サイトは、カタログショッピングサイトのようになっていき、

納税者側にも「原則2千円の自己負担で、好みの商品が手に入る!自分がお得になる返礼品は何か?」という視点だけで自治体を選ぶ人が増えてしまい
そうなると単なる買い物行為と変わらず、ふるさと納税の本来の趣旨からかけ離れていくばかりです。

 

そこで総務省は、この問題に対し2017年度に大臣通知で全国の自治体に「良識ある対応」を呼びかけました。具体的な内容は下記のとおりです。

  1. 返礼品の調達価格を寄付金額の3割以内に抑えること
  2. 地場産品以外の扱いも控えること

通知の結果、返礼割合が3割を超えていた自治体の割合は、2017年度の65%から2018年度9月では14%へと減少。ゆがみは少しずつ是正されてきました。
しかし、一部の自治体は通知に従わず、寄付金集めのために高額な返礼品を提供し続けています。

そのため、総務省は冒頭の記者会見で
「制度の趣旨をゆがめ、過度な返礼品を用意し続けている自治体への寄付を税優遇から除外する」という抜本策を表明したのです。2019年度税制改正での実現を目ざしています。

私は、これで、「ふるさと納税が原点に戻ってくれれば…!」と期待しています。

当たり前ですが、どこの自治体も少しでも多くの税収を確保したいのが本音でしょう。
地域によって、特産品の多い少ないなど様々な事情があり、抱えている難しさも違うと思います。
税収が減るのは大変なことです。

ですから、納税者側が、ふるさと納税の理念・趣旨を理解して
返礼品のソン・トク勘定だけで自治体を選ぶことはせず、本質はあくまで寄付なのだと理解して
あたたかく地域応援していく土壌が広がっていくことも大切だと考えています。

FPとしては、ご自分の「源泉徴収票」や「住民税決定通知書」に、何が書かれてあるかに無頓着な方が世の中には多いので、ふるさと納税を機に、一人ひとりがもっと税金の計算や使われ方に関心を持ってくれたらいいなとも思ってきました。

制度の趣旨をお伝えした上で
生活に取り入れることをお勧めしていた制度ですが、

今年は、私の住む北海道は地震で被災地となり
被害総額は、毎日新聞2018年9月27日の記事によると、観光業も含めて2,119億円!
と言われているので、自分の居住地への納税も大切になってきますね。

いろいろと難しい問題があるふるさと納税ですが
下記の言葉に込められた理念のとおり、制度が活用されていくことを願っています。


一人ひとりの貢献が地方を変え、そしてより良い未来をつくる。
全国の様々な地域に活力が生まれることを期待しています。

(出典:総務省 ふるさと納税ポータルサイト)
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/policy/